JA長野厚生連は7月9日、10日の両日、第61回農村医学夏季大学講座を、佐久市臼田のJA長野厚生連佐久総合病院農村保健教育ホールにて、昨年に引き続きオンラインによるハイブリッド形式にて開講しました。今年は「地域医療をともにつくる」をメインテーマに、「COVID-19後の地域医療構想を考える」をサブテーマに掲げました。
1日目は若月賞受賞講演を含め全3講演が行なわれ、2日目は講演と講師らによるシンポジウムを行ないました。第30回若月賞授賞式では、東御市立みまき温泉診療所顧問の倉澤隆平氏、沖縄大学名誉教授の櫻井國俊氏が受賞されました。両氏による若月賞受賞者講演として、倉澤氏からは「【長野県国保の地域医療の種】と【亜鉛欠乏症の臨床の芽】とが残った。」をテーマに講演いただきました。「亜鉛欠乏症には多くの一般症状があり気づきにくい」「原因不明の食欲不振はまず亜鉛欠乏症を疑え」医師としての経験、研究を亜鉛欠乏症という一疾病に目を向けた講演でした。
櫻井氏からは「生活環境の改善を目指して~衛生工学者として歩んだ50年~」をテーマに、沖縄県の自然環境、生活環境の保全のために最前線で活動されている経験を講演いただきました。沖縄県のPFAS問題をはじめ昨今の日本政府について取り上げた講演に、多くの方々が立ち向かっている国家規模の課題が多くあることを考えさせられました。
また、JA新潟厚生連村上総合病院院長の林達彦氏からは「医師偏在指数全国最下位の新潟県で、持続可能な医療体制は構築できるのか?」をテーマに、新潟県村上市の医療体制と佐久地域を紐づけ、講演いただきました。医師不足を乗り越えるための様々な工夫は我々医療従事者にとっても非常に参考になり、見事な戦略に感銘を受けました。
2日目は、長野市保健所長の小林良清氏による講演が行なわれました。小林氏からは「医療政策の動向からこれからの地域医療を考える」をテーマに、医療政策の専門家として保健所長ならではの視点、保有するデータを活用し講演いただきました。2025年問題を目前にした今、「治す」医療から「支える」医療にシフトする体制を整えるなど、地域医療構想の本質について説明いただきました。
本講座の締めくくりとして「地域医療をともにつくる~COVID-19後の地域医療構想を考える~」をテーマにシンポジウムが行なわれました。1日目講師の林氏、2日目講師の小林氏に加え、長野県社会福祉協議会会長の藤原忠彦氏、多津衛民芸館長NPO法人未来工房もちづき理事長の吉川徹氏をシンポジストに、来場者からの質問に応じていただき、地域医療について深く考えることができました。
昨年に引き続き、万全の感染防止対策を講じながら、ハイブリッド方式による来場者と視聴者が一体となった講座となり成功裡に終了することができました。コロナ禍により少なからず日常生活に制限を受ける中で、多くの地域住民の方々とともに講師先生方の貴重な講演に耳を傾けることができましたことを大変喜ばしく考えております。